12月は、少年野球にとって特別な月だ。
寒さが増す季節でありながら、チームの中はどこか慌ただしく、落ち着かない。
理由はひとつ。
卒団式が近づいてくるからだ。
このチームでは、毎年きちんと卒団式をやる。
形式も、流れも、ある程度「前例」がある。
だからこそ、こう言われる。
「去年と同じでいいよね」
「これ、毎年やってるから」
「失敗できないからさ」
誰も責めていない。
誰も無理を言っているつもりもない。
でも、その言葉が少しずつ、確実に重くのしかかってくる。
見えない仕事が、静かに増えていく
12月に入ると、やることは一気に増えた。
- 卒団式用の動画作成
- 各学年・各選手の賞状づくり
- 親子試合の段取り
- 当日の流れ確認
- 過去の資料の掘り起こし
どれも「誰かがやらなきゃいけないこと」だ。
そして気づくと、
それらは自然と、自分のところに集まってきていた。
理由は簡単だ。
- 前にやったことがある
- パソコンが使える
- 映像編集ができる
断る理由が、見つからない。
「ちゃんとやらなきゃ」という空気
卒団式は、子どもたちにとって節目の行事だ。
6年間、あるいはそれ以上続けてきた野球の一区切り。
だからこそ、
「ちゃんとやらなきゃ」という空気が、チーム全体に漂っていた。
でも、その「ちゃんと」は、誰のためのものだろう。
- 子どものため
- 親の自己満足
- 前例を崩さないため
考え始めると、答えが分からなくなる。
それでも、準備は止まらない。
子どもは、ただ楽しみにしているだけなのに
不思議なことに、子どもたちは違った。
- 親子試合、楽しみだな
- 何の賞もらえるかな
- みんなで集まれるの嬉しい
その表情は、驚くほどシンプルだった。
格式も、完成度も、完璧さも、
子どもたちは求めていない。
「楽しいかどうか」
それだけだった。
このときは、まだ気づいていなかった
12月の時点では、まだ余裕があった。
忙しいけれど、何とか回っている。
「まぁ、こんなもんだろう」
「父母会長って、こういうものだろう」
そう思っていた。
でも今振り返ると、この12月は、
確実に“始まり”だった。
静かに、音も立てずに、
プレッシャーが積み重なり始めていた。
このときはまだ、
それが家族に影響を与えるとは、想像していなかった。
次回予告(第3話)
1月。
卒団式本番と、初めての大きな遠征。
「イベントを成功させる」という言葉の裏に、
どれだけの調整と気遣いが必要なのか。
楽しい一日の裏側が、少しずつ見え始める。



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